「いかのおすし」の意味と教え方 子どもを守る防犯標語の実践ガイド

子どもが不審者から身を守るための防犯標語「いかのおすし」。この5文字には、危険回避のための重要な行動指針が込められています。

「いかのおすし」の5つの約束:

  • 「いか」ない:知らない人についていかない
  • 「の」らない:知らない人の車に乗らない
  • 「お」おごえをだす:危険を感じたら大声を出す
  • 「す」ぐにげる:危険を感じたらすぐ逃げる
  • 「し」らせる:何かあったら大人に知らせる

この標語は2004年に警視庁少年育成課と東京都教育庁が共同で考案し、現在も全国の保育園・小学校で広く活用されています。本記事では、「いかのおすし」の意味から年齢別の効果的な教え方、教材の活用法まで、子どもの安全を守るための実践的な知識を解説します。

目次

「いかのおすし」とは?5つの約束の意味

「いかのおすし」は子どもが不審者から身を守るために大切な5つの行動を覚えやすくした防犯標語です。この言葉は単なる標語ではなく、子どもたちの安全を守るための具体的な行動指針となっています。

「いかのおすし」の5つの約束

それぞれの文字が表す意味と重要性を詳しく見ていきましょう。

「いか」ない:知らない人についていかない 接触の回避を意味し、犯罪被害の第一段階を遮断する最も重要な予防措置です。子どもは大人の言うことを素直に聞いてしまう傾向があるため、優しく声をかけてくる不審者に対して警戒心を持てるよう教える必要があります。

「の」らない:知らない人の車に乗らない 車両による連れ去りは解決を困難にするため、物理的な隔離空間への移動を拒絶することを教えます。車に乗ってしまうと短時間で遠くに連れ去られてしまい、周囲の大人の目も届きにくくなります。

「お」おごえをだす:危険を感じたら大声を出す 周囲への援助要請であると同時に、加害者に対する心理的な牽制効果を狙ったものです。大声を出すことで不審者を驚かせ、ひるませる効果があります。

「す」ぐにげる:危険を感じたらすぐ逃げる 対人距離を確保し、物理的な加害可能領域から離脱する行動です。犯罪者から手の届かない距離まで離れることが護身の基本であり、特に重要な行動指針とされています。

「し」らせる:何かあったら大人に知らせる 事後的な通報行動であり、二次被害の防止や犯人検挙につなげるための社会的連携アクションです。小さな出来事でも報告することで、大きな事件を未然に防げる可能性があります。

「いかのおすし」が生まれた背景

2000年代初頭、日本国内では児童を標的とした凶悪な誘拐・殺害事件が相次ぎ、社会問題となっていました。特に2001年から2003年にかけて、子どもを標的にした痛ましい事件が発生し、従来の「地域で見守る」という受動的な防犯体制から、児童自身に「自らの身を守る能力」を付与する能動的な防犯教育への転換が求められていました。

こうした社会的要請に応える形で、2004年(平成16年)に治安当局と教育行政が連携し、小学校低学年以下の児童でも容易に記憶し、かつ実践できる行動指針として開発されたのが本標語です。子どもたちの心に強く残るようインパクトを重視し、食べ物にちなんだ言葉で親しみやすく表現されています。

東京都での制定以降、そのキャッチーな語感と明確な行動指示が評価され、瞬く間に全国の警察組織や教育委員会へと波及し、事実上の国家標準としての地位を確立しました。2025年現在も、札幌市や千葉県印西市など全国各地の教育現場で活用され続けています。

「いか」ない:知らない人についていかない

「ついていかない」は防犯の基本中の基本です。なぜなら、見知らぬ人の真の意図は外見からでは判断できないからです。優しく話しかけてくる人でも、悪意を持っている可能性があります。

なぜついていってはいけないのか

子どもには「知らない人 = 危険」という単純な図式ではなく、**「知らない人の誘いに応じることが危険」**という点を理解させることが重要です。どんなに優しそうな人でも、保護者の許可なく一緒に行動することは避けなければなりません。

また、顔見知りの人であっても、**「おうちの人と約束していない人にはついていかない」**というルールを徹底することが大切です。事前に保護者から連絡がない限り、たとえ知っている大人であっても一緒に行動しないよう教えましょう。

子どもが騙されやすい誘い文句

不審者は子どもの心理を巧みに利用して近づいてきます。以下のような誘い文句に注意が必要です:

緊急事態を装うケース:

  • 「お母さんが事故にあったから、急いで案内するよ」
  • 「お父さんが病院に運ばれたから、一緒に行こう」

好奇心を誘うケース:

  • 「かわいい子猫がいるから見に行こう」
  • 「珍しいゲームがあるから見せてあげる」

欲しいものを餌にするケース:

  • 「新しいゲームをプレゼントするよ」
  • 「お菓子をあげるから来て」

断り方の具体例とロールプレイ

こうした誘いへの対処法としては、「お母さん(お父さん)に聞いてからにする」と言って断ることを教えましょう。また、「どんなに急いでいる場合でも、必ず家の人や学校の先生に確認する」というルールを徹底することが大切です。

📝 練習すべき断りフレーズ:

  • 「おうちの人に許可をもらっていないので行けません」
  • 「先生に聞かないと答えられません」
  • 「お母さんと約束しているので、行けません」

具体的な教え方としては、実際の場面を想定したロールプレイが効果的です。「もし知らない人がこう言ってきたら、どうする?」という形で子どもに考えさせ、正しい対応を体で覚えさせましょう。定期的に練習することで、咄嗟の場面でも適切に対応できるようになります。

「の」らない:知らない人の車に乗らない

「のらない」は、知らない人の車に乗らないという約束です。車に乗ってしまうと、短時間で遠くに連れ去られてしまう危険性があり、周囲の大人の目も届きにくくなるため、「いかない」と並んで特に重要な約束と言えるでしょう。

車に乗る危険性

車両による連れ去りには、以下のような深刻なリスクがあります:

密室化と逃走困難: 車内に入れば密室状態となり、助けを求めにくく、逃げることも困難になります。ドアをロックされてしまえば、子どもの力では脱出できません。

迅速な移動と発見の遅れ: 短時間で遠くまで移動できるため、発見されるまでに時間がかかります。徒歩での連れ去りと比較して、捜索範囲が格段に広がってしまいます。

外部からの視認性の低さ: 車の中は外からの視認性が低く、周囲の人に異変に気づいてもらいにくい状況です。特にスモークガラスの車両では、中の様子がほとんど見えません。

断り方のフレーズ練習

断る際には明確な言葉で拒絶し、その場からすぐに離れることを教えましょう。

🗣️ 練習すべき断りフレーズ:

  • 「お家の人に許可をもらっていないので乗れません」
  • 「先生(または保護者)に聞かないと答えられません」
  • 「今は急いでいるので、また今度にします」

これらの断り方を実際に声に出して練習することで、咄嗟の場面でも対応できるようになります。また、断った後は**「その場からすぐに離れる」**ことも併せて教えましょう。

合言葉の活用法

許可なく車に乗らないルールを徹底するためには、日常的な場面でも意識づけが大切です。

🔑 効果的な対策:

  • 「誰の車に乗っていいか」を事前に明確にする:祖父母や親戚など、乗ってもよい人のリストを子どもと共有する
  • 送迎予定の変更は必ず事前連絡:急な予定変更があった場合は、必ず子どもに直接連絡する
  • 家族の合言葉を決める:本当に保護者から頼まれた人かどうかを確認するための秘密の合言葉を設定する

合言葉は定期的に変更し、第三者に知られないよう管理することが重要です。また、子どもには「合言葉を知らない人には絶対についていかない」と徹底して教えましょう。

「お」おごえをだす:危険を感じたら大声を出す

「おおごえをだす」は、子どもが危険な状況に直面したときの重要な防衛手段です。「いやだな」「こわいな」と少しでも感じたら、躊躇せずに大声を出すことの大切さを教えましょう。

大声を出す重要性

大声を出すことには、複数の防犯効果があります:

周囲への援助要請: 周囲の人に異変を知らせ、助けを求めることができます。人通りのある場所では、大声を聞いた大人が駆けつけてくれる可能性が高まります。

不審者への牽制効果: 不審者を驚かせ、ひるませる効果があります。犯行の露見を恐れる心理が働き、犯罪を断念させる可能性があります。

自己の恐怖心の軽減: 自分自身の恐怖心を和らげ、行動する勇気を持つことができます。声を出すことで、硬直した体が動きやすくなる効果もあります。

効果的な声の出し方

単に叫ぶのではなく、具体的な言葉で叫ぶことを教えましょう。

📢 効果的な声の出し方:

  • 「助けて!」「知らない人です!」など具体的な言葉で叫ぶ
  • 「やめて!」「触らないで!」と明確に拒絶の意思を示す
  • できるだけ大きな声で、周囲に聞こえるように叫ぶ

これにより周囲の人が状況を理解しやすくなり、適切な援助を受けやすくなります。家庭や学校で実際に声を出す練習をし、**「恥ずかしがらずに、思いっきり大声を出していい場面」**を明確にしておきましょう。

防犯ブザーの活用と使い方練習

しかし、恐怖で声が出せないケースもあるため、防犯ブザーの活用も併せて教えることが大切です。防犯ブザーは、子どもがランドセルや通学バッグなど手の届きやすい場所につけておき、いつでも使えるようにしておきましょう。

🔔 防犯ブザーの使い方練習:

  • 定期的に電池のチェックをする(月1回程度)
  • 実際に鳴らす練習をして音の大きさを体感させる
  • ブザーを素早く取り出す動作を繰り返し練習する
  • 紐を引っ張る力加減を体で覚える

実際の場面を想定した声の出し方トレーニングとしては、家庭や学校で以下のような練習が効果的です:

「もしも○○な場面になったら、どんな声を出す?」と具体的に質問し、実際に声を出す練習をする。ロールプレイを通じて、咄嗟の場面での反応を体で覚えることで、いざという時に迷わず行動できるようになります。

「す」ぐにげる:危険を感じたらすぐ逃げる

「すぐにげる」は、子どもが身の危険を感じたとき、躊躇せずにその場から離れることの重要性を教えるものです。子どもの安全を最優先に考え、「逃げることは恥ずかしいことではない」と理解させることが大切です。

逃げるべきサインの見分け方

子どもが危険を感じるサインには以下のようなものがあります:

⚠️ 危険のサイン:

  • 知らない人にしつこく話しかけられる
  • 無理やり腕や服を引っ張られる
  • 頭や肩などを勝手に触られる
  • 自分の行動をじっと見られたり、後をつけられたりする
  • 「いやだな」「こわいな」と直感的に感じる状況

これらのサインに気づいたら、すぐに逃げる行動を取ることが大切です。特に子どもの直感は重要で、理由がうまく説明できなくても「怖い」と感じたら逃げてよいことを教えましょう。

効果的な逃げ方のポイント

逃げる際には、以下のポイントを意識させましょう:

🏃 効果的な逃げ方:

  • 人の多いところや明るい場所に向かう
  • 走れる場所なら全力で走る
  • 逃げながら**「助けて!」と叫ぶ**
  • 近くに安全な場所(店舗や公共施設など)があればそこに駆け込む

特に重要なのは、犯罪者から手の届かない距離まで離れることです。少し距離を取っただけで安心せず、十分な距離を確保するか、安全な場所に入るまで逃げ続けることを教えましょう。

安全な場所の見つけ方(子ども110番の家)

日頃から通学路や遊び場の周辺にある安全な場所を子どもと一緒に確認しておくことが大切です:

🏠 安全な場所の例:

  • コンビニエンスストアスーパーマーケット
  • 交番消防署
  • 「子ども110番の家」の看板がある民家や商店
  • 学校公民館などの公共施設

特に**「子ども110番の家」**では、子どもが危険を感じたときに駆け込める場所として、地域のボランティアの協力により安全を確保してくれるとともに、警察への通報や保護者への連絡をしてくれます。

子どもと一緒に通学路を歩き、これらの場所を実際に確認する**「安全マップづくり」**は非常に効果的です。また、「もしもの時に逃げ込める場所」を子どもと約束しておくことで、いざという時の行動の選択肢を増やすことができます。

「し」らせる:何かあったら大人に知らせる

「しらせる」は、子どもが不安や危険を感じたことを信頼できる大人に伝えることの大切さを教える約束です。小さな出来事でも報告することで、大きな事件を未然に防げる可能性があります。

信頼できる大人とは誰か

子どもが「しらせる」べき信頼できる大人を、具体的に教えましょう:

👨‍👩‍👧‍👦 信頼できる大人:

  • 両親や兄弟、祖父母などの家族
  • 学校や保育園、幼稚園の先生
  • 塾や習い事の指導者
  • 近所の顔見知りの大人(子ども110番の家の人など)

子どもには具体的に「この人たちには何でも話していいんだよ」と教えることで、安心感を持たせることが大切です。また、複数の大人の選択肢を示すことで、一人が不在の場合でも別の大人に相談できることを知らせましょう。

具体的な伝え方(5W1H)

伝えることの重要性について、以下のポイントを子どもに説明しましょう:

💬 伝える理由:

  • 自分の身を守るために必要なこと
  • 友達や他の子どもの安全にもつながること
  • 何か嫌なことがあっても、子どもの責任ではないこと

具体的な伝え方としては、「いつ、どこで、だれが、どうした」という5W1Hを意識して話すことを教えると、子どもでも状況を整理して伝えやすくなります:

  • いつ:今日の帰り道で
  • どこで:公園の近くで
  • だれが:知らない大人の人が
  • どうした:写真を撮ろうと言ってきた

また、「知らせる練習」として、日常的な出来事を報告する習慣をつけることも効果的です。

些細なことでも報告する習慣づけ

重要なのは、些細なことでも報告する習慣づけです。子どもは「大人に心配をかけたくない」「怒られるかもしれない」という理由で黙ってしまうことがあります。

🎯 安心して話せる環境づくり:

  • 話してくれたことに対して必ず「ありがとう」と伝える
  • 子どもの話を最後まで真剣に聞く
  • 話した内容で子どもを責めない

このような対応を心がけることで、子どもが安心して話せる環境をつくりましょう。日常会話の中で「今日学校であったこと」「道で見たこと」などを話す習慣をつけることで、何か異変があったときも自然に話せるようになります。「いつでも話を聞くよ」という姿勢を示し、子どもが安心して知らせられる関係性を築くことが大切です。

年齢別「いかのおすし」の教え方

子どもの成長段階や理解力に合わせて、防犯意識を効果的に育むことが大切です。年齢に応じた「いかのおすし」の教え方を見ていきましょう。

幼児期(3〜5歳)の教え方と注意点

幼児期は、基本的な防犯意識の土台を作る重要な時期です。この年齢では、抽象的な説明よりも具体的な事例を通して教えることが効果的です。

🎵 幼児に伝える際のポイント:

  • 楽しく学べる工夫:歌やダンス、キャラクターを使ったアニメーションなど、遊び感覚で覚えられる方法を取り入れる
  • 繰り返し伝える:日常の中で折に触れて「いかのおすし」を話題にし、自然と記憶に定着させる
  • 恐怖心を与えすぎない:過度な不安を抱かせないよう、落ち着いた口調で説明する

幼児には「知らない人からお菓子をもらってはダメなんだよ」「怖いと感じたら大きな声で『助けて!』と言おうね」など、具体的な状況設定で話しかけましょう。警視庁が制作した「いかのおすしのうた」などの教材も効果的です。

視覚教材として、紙芝居やイラストカードを使用すると、言葉だけでは理解しにくい概念も視覚的に捉えやすくなります。また、人形劇やぬいぐるみを使った寸劇なども、幼児の興味を引きつける効果的な方法です。

小学校低学年(6〜9歳)への効果的な伝え方

小学校低学年になると、状況を判断する力が少しずつ育ってきます。この時期は、日常生活における防犯行動の練習を重視しましょう。

📚 低学年への教え方のコツ:

  • 防犯ブザーの使い方訓練:実際に音を鳴らす練習や、電池交換の確認を定期的に行う
  • リアルな状況設定での対話:「学校からの帰り道、知らない人に声をかけられたらどうする?」など具体的なシーンをもとに話し合う
  • 安全マップの作成:自宅周辺の危険な場所や安全な場所(子ども110番の家など)を一緒に確認する

低学年の子どもには「なぜダメなのか」という理由も簡単に説明すると、より理解が深まります。また、親子で通学路を一緒に歩き、もしもの時に助けを求められる場所(コンビニ、交番など)を確認しておくことも大切です。

この時期は、学校での防犯教室や地域の防犯イベントにも積極的に参加させることで、家庭以外でも防犯知識を学ぶ機会を増やしましょう。友達と一緒に学ぶことで、お互いに意識を高め合う効果も期待できます。

小学校高学年(10〜12歳)の防犯意識の育て方

高学年になると思考力が発達し、より複雑な状況判断ができるようになります。この時期は、自ら考えて行動できる防犯意識を育むことが目標です。

🧠 高学年向けの指導法:

  • 「なぜ」を重視した説明:防犯行動の意味や背景を理解させ、自分で判断できる力を養う
  • 友達を守る意識の育成:自分だけでなく、周囲の友達の安全も考えられるよう促す
  • 新しい防犯知識の追加:SNSやオンラインの危険性など、成長に合わせた防犯知識を教える

高学年の子どもには「いかのおすし」を基本としながらも、より実践的な防犯スキルを身につけられるよう指導しましょう。例えば、「不審な人物を見かけたら、どう周囲に知らせるか」「友達が危険な目に遭いそうなとき、どう助けるか」といった応用的な対応も考えさせると良いでしょう。

また、この年齢になるとスマートフォンを持ち始める子どもも増えるため、SNSに起因する犯罪被害についても注意喚起が必要です。2024年の統計では、SNS起因の被害児童数が1,486人に達し、そのうち小学生が136人を占めています。物理的な危険だけでなく、デジタル空間での安全意識も併せて教育することが重要です。

保育園・学校での「いかのおすし」を活用した防犯教育

教育機関では、子どもたちの安全を守るため、体系的な防犯教育が求められます。「いかのおすし」を活用した効果的な取り組み方を見ていきましょう。

不審者対応訓練の実施方法とポイント

保育園や学校での不審者対応訓練は、子どもたちの安全確保スキルを実践的に身につける重要な機会です。

🚨 効果的な訓練のポイント:

  • 適切な合言葉の設定:「○○先生、職員室へお越しください」(実際には勤務していない先生の名前を使用)や「保育園へうさぎさんが遊びにきました」など、不審者を刺激しない合言葉を決めておく
  • 段階的な訓練設計:まずは説明から始め、徐々に実践的なシミュレーションへと進める
  • 多様なシナリオ想定:不審者が外にいる場合、園内に侵入した場合など、様々な状況に対応できるよう訓練する

訓練を実施する際は、子どもたちに不安を与えすぎないよう配慮しながらも、万が一の事態に冷静に対応できる力を育むことを意識しましょう。定期的な訓練を通じて、子どもたちも先生方も実際の緊急時に適切に行動できるようになります。

訓練後には必ず振り返りの時間を設け、「今日の訓練でよくできたこと」「もっと改善できること」を話し合いましょう。子どもたちからの質問や不安にも丁寧に答え、安心感を与えることが大切です。

園児・児童に伝わる具体的な教え方

子どもたちが「いかのおすし」の意味を理解し、実践できるようにするためには、年齢や発達段階に合わせた伝え方が重要です。

📖 効果的な教育方法:

  • 視覚教材の活用:紙芝居、イラスト、アニメーションなど、視覚に訴える教材で記憶に残りやすくする
  • 参加型アクティビティ:「こんな時どうする?」と問いかけ、子どもたちが主体的に考える機会を設ける
  • 具体的特徴の説明:「サングラスをかけたり、フードをかぶったりして自分の顔を隠している人」など、不審者の特徴を具体的に説明する

教育効果を高めるには、単に標語を覚えさせるだけでなく、それぞれの言葉が示す行動の意味を理解させることが大切です。例えば、「いか」ない理由を「知らない人についていくと危険なことがあるから」と具体的に説明し、子どもの「なぜ?」という疑問に答えていくことで理解が深まります。

また、ICT機器を活用した指導も効果的です。実物投影機や書画カメラを用いてワークシートを提示したり、タブレットで動画教材を視聴したりすることで、より視覚的にわかりやすい指導が可能になります。

保護者との連携による防犯意識の強化

子どもの安全を守るためには、保育園・学校と家庭の一貫した取り組みが不可欠です。保護者と連携した防犯教育を進めましょう。

🤝 効果的な連携方法:

  • 防犯教育の情報共有:園や学校で行っている「いかのおすし」教育の内容を保護者に伝え、家庭でも同じ言葉を使って指導してもらう
  • 保護者参加型の防犯教室:保護者も一緒に参加できる防犯教室を開催し、家庭での教え方のコツを伝える
  • 地域安全マップづくり:保護者と子どもが一緒に通学路の安全マップを作成する活動を企画する

些細な出来事でも保護者と情報を共有し、早期発見・対応できる体制づくりが重要です。また、**子どもの様子が「いつもとちょっと違う」**と感じたら、優しく声をかけて話を聞き出すよう保護者に伝えましょう。

保護者会や学級通信などを通じて、定期的に防犯情報を発信することも効果的です。地域で発生した不審者情報や、最近の犯罪手口などを共有することで、保護者の防犯意識を高めることができます。

防犯教育は一過性のものではなく、日常的に意識し続けることが大切です。保育園・学校と家庭、さらには地域全体で子どもたちを守る環境を整えていきましょう。

「いかのおすし」を楽しく学べる教材とツール

子どもたちに防犯意識を効果的に教えるには、楽しく学べる教材やツールの活用が欠かせません。「いかのおすし」の教育効果を高める様々な教材を紹介します。

おすすめの絵本・紙芝居・アニメーション

子どもたちが視覚的に理解しやすい絵本や紙芝居は、防犯教育の入り口として最適です。

紙芝居「はなちゃんのかえりみち~いかのおすし~」

独立行政法人日本スポーツ振興センターが制作したこの紙芝居は、主人公の「はなちゃん」が下校中に不審者に遭遇し、防犯ブザーを鳴らして「こども110番の家」に駆け込むというストーリーです。A3サイズ13枚で構成され、はなちゃんが恐怖を感じながらも勇気を出して行動する様子や、近所の住民が連携して警察に通報するプロセスが描かれています。

この教材は、札幌市などの自治体で防犯教育用資材として貸し出しが行われているほか、同センターのウェブサイトやYouTubeで無料視聴も可能です。物理的な紙芝居が入手できない環境でも利用できる点が特徴です。

警視庁公式動画コンテンツ

警視庁は、YouTubeの公式チャンネルを通じて、「いかのおすし」に関する啓発動画を継続的に配信しています。アニメーションや歌、ダンスを取り入れた構成で、現代の児童が親しみやすい内容となっています。

具体的には、「おうちの人とのおやくそく編」や「たてものに入るときにきをつけること編」など、状況別に細分化されたコンテンツが用意されています。動画の再生回数は数万から数十万回に達しており、家庭や教育現場での需要の高さが示されています。

防犯ソングと防犯ダンスの活用法

音楽やダンスを取り入れることで、子どもたちはより楽しく防犯知識を身につけられます。

警視庁の「いかのおすしのうた」は、回転寿司をバックにイカのキャラクターが踊るアニメーションで、歌を通じて防犯標語を自然に覚えられる工夫がされています。身体的な動作を伴う学習(TPR: Total Physical Response)は、幼児や低学年児童の記憶定着に極めて有効です。

🎶 防犯ソング・ダンスの活用ポイント:

  • 日常的に繰り返し歌ったり踊ったりすることで定着を促進する
  • 親子で一緒に楽しむことで、家庭内でも防犯意識を共有する
  • 季節の行事や防犯教室などの機会に定期的に取り入れる

地域独自の取り組みも活発で、例えば鳥取県では子どもたちが一緒に踊れるオリジナル防犯ダンスを制作しています。こうしたダンスは保育園や小学校での防犯教室や運動会などのイベントで活用でき、体を動かしながら楽しく学べるため記憶に残りやすいのが特徴です。

デジタル教材と防犯グッズの紹介

オンラインで利用できるデジタル教材も充実しています。自治体や警察のウェブサイトでは、防犯に関するゲームや動画、PDFリーフレットなどが無料で提供されていることが多く、スマートフォンやタブレットでいつでも学習できます。

防犯ブザー

実践的な防犯グッズとして最も基本的なものが防犯ブザーです。子どもが実際に使えるようにするには、日頃から以下の準備が大切です:

🔔 防犯ブザーの準備:

  • 定期的な電池チェックと交換(月1回程度)
  • 実際にブザーを押して音を出す練習
  • ランドセルの肩ベルトなど、すぐに使える位置につける
  • 紐を引っ張る力加減を体で覚える

子ども用GPS

近年は子ども用GPSや見守りアプリも普及し、ICT技術を活用した防犯対策も充実しています。これらは子どもの現在位置をリアルタイムで確認できるため、保護者の安心につながります。ただし、GPSはあくまで補助的なツールであり、「いかのおすし」の基本行動を身につけることが最も重要です。

学校や地域での取り組みとしては、「防犯いかのおすし」標語入りの防犯ノートの配布なども効果的です。日常的に目にする文房具に防犯メッセージがあることで、継続的な意識付けができます。

「おかしも」と「いかのおすし」の違い

児童安全教育において「いかのおすし」と並んでよく使われるのが、防災標語「おかしも」です。音韻的な類似性から児童にとって混同しやすいこの二つの標語ですが、要求される行動原理は場面によって正反対になることがあります。

防災と防犯の行動指針はどう違うのか

「おかしも」は**「おさない・かけない・しゃべらない・もどらない」**の頭文字をとった防災標語で、地震や火災時の避難行動を示すものです。一方、「いかのおすし」は不審者から身を守るための防犯標語です。

この二つの標語の決定的な違いを、以下の表で比較します:

比較項目いかのおすし(防犯)おかしも(防災)対象となる危機人為的悪意(不審者、誘拐)自然災害(地震、火災)主要目的個人の生存と離脱集団の秩序維持と避難発声行動「大声を出す」(助けを呼ぶ)「しゃべらない」(指示を聞く)移動行動「すぐ逃げる」(全速力での回避)「かけない」(走らず整然と移動)他者との関係距離を取り、拒絶する協調し、押し合わない

特に注意が必要なのは、「大声を出して逃げる」べきか、「静かに歩く」べきかという判断です。この判断は、緊急時のパニック状態にある児童にとって高度な認知処理を要求します。

混同を避けるための教え方の工夫

両者を明確に使い分けるため、教育現場では以下のような工夫が推奨されています:

🎓 効果的な指導法:

  • 状況設定(コンテキスト)を明確にする:「今は地震の訓練です」「今は防犯の訓練です」と明示する
  • 別の単元として扱う:防災訓練と防犯教室を別の機会に実施し、混同を避ける
  • ICT機器で視覚的に提示:場面の違いを画像や動画で示し、理解を助ける
  • 思考訓練を取り入れる:「この場面ではどちらの約束を使うか」を子ども自身に考えさせる

このような指導により、単なる暗記から状況判断能力の育成へと昇華させることができます。子どもたちが「なぜこの場面ではこう行動するのか」という理由を理解することで、咄嗟の場面でも適切な判断ができるようになります。

保護者にも両者の違いを説明し、家庭でも同様の指導をしてもらうことで、より確実な定着が期待できます。また、定期的に復習の機会を設け、記憶を新しく保つことも重要です。

よくある質問(FAQ)

「いかのおすし」はいつから使われていますか?

2004年(平成16年)に警視庁少年育成課と東京都教育庁指導企画課が共同で考案しました。その後全国に広まり、現在も多くの保育園・小学校で活用されています。2025年現在も札幌市や千葉県印西市など各地の教育現場で実践されています。

「おかしも」と「いかのおすし」の違いは何ですか?

「おかしも」は防災(地震・火災時)の避難行動、「いかのおすし」は防犯(不審者対策)の行動指針です。「おかしも」では「しゃべらない・かけない」ですが、「いかのおすし」では「大声を出す・すぐ逃げる」と行動が正反対になる場面があるため、明確に使い分ける必要があります。

何歳から教えるべきですか?

3歳頃から、遊び感覚で教え始めることができます。歌やダンス、絵本などを使って楽しく覚えさせ、年齢に応じて理解度を深めていくことが大切です。幼児期は恐怖心を与えすぎないよう、落ち着いた口調で伝えましょう。

防犯ブザーは必要ですか?

はい、推奨されます。恐怖で声が出せないケースもあるため、防犯ブザーは有効な補助手段です。ランドセルの肩ベルトなど、すぐに使える位置につけ、定期的に電池チェックと使い方の練習を行いましょう。

「いかのおすし」を教えるときの注意点は?

過度な不安を与えないよう、落ち着いた口調で伝えることが大切です。「世の中は危険だらけ」ではなく、「自分の身を守る方法を知っていれば安心」という前向きなメッセージとして伝えましょう。

知っている人から誘われた場合はどうすればいいですか?

「おうちの人と約束していない人にはついていかない」というルールを徹底しましょう。顔見知りでも、保護者の許可なく行動しないことを教えることが重要です。家族で合言葉を決めておくと効果的です。

教材はどこで入手できますか?

警視庁公式YouTubeチャンネルで無料動画が視聴できます。紙芝居「はなちゃんのかえりみち」は日本スポーツ振興センターのウェブサイトや自治体の防犯教育資材として利用可能です。

まとめ:子どもの安全を守るために今すぐできること

「いかのおすし」は、子どもの防犯教育の基本として20年以上にわたり活用されてきました。この5つの約束を日常的に話し合い、具体的な状況を想定したロールプレイを行うことで、万が一の際に本能的に対応できる力が身につきます。

家庭では通学路の安全マップづくりや防犯ブザーの使い方練習を、学校や保育園では不審者対応訓練や視覚教材を活用した指導を継続的に行いましょう。地域の「子ども110番の家」や見守り活動に参加することで、子どもたちの安全な環境づくりに貢献できます。

防犯対策は継続することが何より大切です。季節の変わり目や長期休暇前など、定期的に「いかのおすし」のおさらいをする機会を設け、子どもから大人まで誰もが安心して暮らせる社会づくりを目指しましょう。

【参考情報】


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