賃貸に10年住んだ退去費用の相場は?経年劣化で安くなる理由と注意点

「賃貸に10年も住んだから、退去費用が高額になるのでは…」と不安を抱えていませんか?ネットで調べても情報がバラバラで、結局いくら用意すればいいのかわからないまま退去日が近づいている方も多いはずです。

実は、退去費用の仕組みを知らないまま請求書にサインしてしまい、本来払わなくてよい費用まで負担しているケースは少なくありません。国土交通省のガイドラインでは「通常の使用による損耗は貸主負担」と明記されているにもかかわらず、この事実を知らずに損をしている人が後を絶たないのです。

この記事では、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を根拠に、10年居住時の退去費用相場を間取り別に解説。経年劣化で安くなる仕組み、高額になるケース、そして高すぎる請求への具体的な対処法まで網羅しています。

読み終えれば、適正な退去費用を自分で判断できる知識が身につき、不当な請求に毅然と対応できるようになります。

💡 結論からお伝えすると、10年住んだ賃貸の退去費用は3万〜5万円が相場。長く住むほど安くなる理由と、それでも高くなる「例外ケース」を知っておくことが、損をしないための第一歩です。

目次

賃貸に10年住んだ場合の退去費用相場

10年居住時の退去費用は3万〜5万円が目安

賃貸に10年住んだ場合の退去費用は、3万〜5万円程度が相場です。この金額は、通常の使用による汚れや傷であれば、経年劣化として認められるケースが多いためです。

ただし、この相場はあくまで目安であり、実際の退去費用は物件の状態や契約内容によって変動します。タバコのヤニ汚れやペットによる傷がある場合は、10万円以上になることもあります。

退去費用の内訳

退去費用は主に以下の項目で構成されています。

項目内容相場
ハウスクリーニング代専門業者による清掃費用2万〜4万円
クロス(壁紙)張替え汚損部分の壁紙交換1㎡あたり800〜1,500円
フローリング補修傷や凹みの修繕1㎡あたり1,000〜2,000円
畳表替え畳の表面張替え1枚あたり3,000〜6,000円
設備修繕エアコン・水回りなどの修理内容により異なる

10年以上住んでいる場合、クロスや畳の張替え費用は経年劣化として貸主負担になることが多いため、主にハウスクリーニング代が中心となります。

【間取り別】10年住んだ賃貸の退去費用相場

ワンルーム・1Kの場合

ワンルーム・1Kに10年住んだ場合の退去費用は、3万〜5万円程度が目安です。居室面積が小さいため、ハウスクリーニング代も比較的安く抑えられます。

項目相場
ハウスクリーニング1.5万〜3万円
その他補修(必要な場合)1万〜2万円
合計目安3万〜5万円

1LDK・2DKの場合

1LDK・2DKに10年住んだ場合の退去費用は、5万〜10万円程度が目安です。居室が増える分、クリーニング費用も上がります。

項目相場
ハウスクリーニング3万〜5万円
その他補修(必要な場合)2万〜5万円
合計目安5万〜10万円

2LDK以上の場合

2LDK以上に10年住んだ場合の退去費用は、7万〜15万円程度が目安です。広い物件ほどクリーニング範囲が増え、設備も多くなるため費用が高くなる傾向があります。

項目相場
ハウスクリーニング5万〜8万円
その他補修(必要な場合)2万〜7万円
合計目安7万〜15万円

賃貸に10年住むと退去費用が安くなる理由

経年劣化と耐用年数の仕組み

賃貸物件の退去費用が居住年数に応じて安くなるのは、経年劣化という考え方があるためです。経年劣化とは、時間の経過とともに自然に発生する劣化のことで、通常の使用による損耗は借主の責任ではないとされています。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復について以下のように定義しています。

📌 ガイドラインのポイント:

  • 通常の使用による損耗・経年劣化は貸主負担
  • 故意・過失による損傷は借主負担
  • 通常の使用を超える使用による損耗は借主負担

つまり、普通に生活していて生じた汚れや傷は、借主が負担する必要はないということです。

設備別の耐用年数一覧

設備や内装材には「耐用年数」が設定されており、この期間を過ぎると価値が1円(残存価値)になると考えられています。10年住んでいれば、ほとんどの設備で耐用年数を超えているため、借主の負担は軽減されます。

設備・内装耐用年数10年居住後の残存価値
クロス(壁紙)6年1円(残存価値)
カーペット6年1円(残存価値)
畳表6年1円(残存価値)
畳床6年1円(残存価値)
クッションフロア6年1円(残存価値)
エアコン6年1円(残存価値)
フローリング経過年数は考慮しない部分補修が基本
ユニットバス経過年数は考慮しない部分補修が基本

⚠️ 注意点: フローリングやユニットバスなどは経過年数を考慮しないとされていますが、部分補修が原則であり、全面張替えを請求されることは原則ありません。

負担割合の計算例

クロスの張替え費用を例に、居住年数による負担割合の計算方法を見てみましょう。

📝 計算の前提条件:

  • クロスの耐用年数:6年
  • クロス張替え費用:10万円
  • 借主の過失による汚損あり

【3年居住の場合】 残存価値:10万円 ×(6年-3年)÷ 6年 = 5万円 → 借主負担:5万円

【6年居住の場合】 残存価値:10万円 ×(6年-6年)÷ 6年 = 0円(残存価値1円) → 借主負担:ほぼ0円

【10年居住の場合】 耐用年数を超えているため、残存価値は1円 → 借主負担:ほぼ0円

このように、10年住んでいればクロスの張替え費用はほとんど請求されない計算になります。

【居住年数別】退去費用の相場比較

居住年数によって退去費用がどのように変わるか、1Kの物件を例に比較します。

居住年数退去費用の目安主な内訳
1〜3年5万〜10万円クリーニング代+クロス・設備の負担割合大
4〜6年4万〜7万円クリーニング代+クロス・設備の負担割合減
7〜10年3万〜5万円主にクリーニング代
10年以上3万〜5万円主にクリーニング代

1〜3年で退去した場合

入居から3年程度で退去する場合、設備や内装の残存価値がまだ高いため、借主の負担割合も大きくなります。クロスの汚れや設備の傷があれば、5万〜10万円程度の退去費用がかかることがあります。

4〜6年で退去した場合

4〜6年の居住で退去する場合、クロスなど耐用年数6年の設備は残存価値がほぼなくなります。主にハウスクリーニング代が中心となり、4万〜7万円程度が目安です。

7〜10年で退去した場合

7〜10年住んでいれば、ほとんどの設備で耐用年数を超えています。通常の使用による損耗であれば、3万〜5万円程度のハウスクリーニング代が中心となります。

10年以上住んだ場合

10年以上の長期居住では、経年劣化による設備の価値減少が大きいため、借主の負担は最小限になります。退去費用はほぼハウスクリーニング代のみとなり、3万〜5万円程度が相場です。

10年住んでも退去費用が高くなるケース

経年劣化で退去費用が安くなるとはいえ、すべてのケースで安くなるわけではありません。以下のような場合は、10年住んでいても高額な費用を請求されることがあります。

タバコのヤニ汚れ

タバコのヤニ汚れは経年劣化ではなく、借主の故意・過失による損傷とみなされます。そのため、クロスの耐用年数に関係なく、張替え費用を全額請求されることがあります。

🚬 タバコによる退去費用の例:

  • クロス全面張替え:10万〜20万円
  • エアコンクリーニング:1万〜2万円
  • 消臭作業:1万〜3万円

ベランダでの喫煙であっても、室内に臭いが染み付いている場合は費用を請求されることがあります。

ペットによる傷や臭い

ペットによる傷や臭いも、経年劣化とは認められません。特にペット不可物件で無断飼育していた場合は、契約違反として高額な費用を請求される可能性があります。

🐱 ペットによる退去費用の例:

  • 柱や壁の引っかき傷の補修:5万〜15万円
  • フローリングの傷補修:3万〜10万円
  • 消臭・クリーニング:2万〜5万円
  • クロス全面張替え:10万〜20万円

ペット可物件であっても、通常の使用を超える損傷は借主負担となります。

故意・過失による損傷

以下のような損傷は、居住年数に関係なく借主の負担となります。

借主負担となる損傷例:

  • 壁に開けた大きな穴
  • 飲み物をこぼしたシミを放置してできたカビ
  • 結露を放置したことによるカビ
  • 引越し作業で付けた傷
  • 故意に壊した設備

「うっかり」でも過失として扱われるため、日頃から丁寧に住むことが大切です。

契約書の特約に注意

賃貸借契約書に特約が記載されている場合、ガイドラインの原則よりも特約が優先されることがあります。

⚠️ よくある特約の例:

  • 「退去時のハウスクリーニング代は借主負担とする」
  • 「クロスの張替え費用は借主が全額負担する」
  • 「畳の表替え費用は借主負担とする」

ただし、消費者に一方的に不利な特約は無効となる場合があります。特約の有効性には以下の要件が必要です。

特約が有効となる要件:

  • 暴利的でないこと
  • 借主が特約の内容を理解していること
  • 借主が特約を受け入れる意思表示をしていること

契約時に特約の内容をよく確認し、不明な点は質問しておきましょう。

退去費用を抑えるためにできること

退去費用を少しでも抑えるために、退去前にできる対策を紹介します。

退去前の掃除はどこまでやるべきか

退去前の掃除は、ハウスクリーニングとは別に行うことをおすすめします。自分で掃除をしても専門業者によるクリーニング代は発生しますが、汚れがひどい場合は追加費用がかかることがあるためです。

🧹 特に掃除しておきたい場所:

  • 換気扇・レンジフード(油汚れ)
  • 浴室(カビ・水垢)
  • トイレ(尿石・黒ずみ)
  • エアコンフィルター(ホコリ)
  • 窓・網戸(汚れ・カビ)

市販の洗剤で落とせる汚れは、退去前に掃除しておくと印象が良くなり、追加請求を避けられる可能性があります。

退去立会いで確認すべきポイント

退去立会いは、部屋の状態を貸主・管理会社と一緒に確認する重要な機会です。その場でサインを求められても、内容に納得できなければサインしないことが大切です。

📋 立会い時のチェックポイント:

  • 指摘された傷や汚れが入居前からあったものではないか
  • 経年劣化として認められるべき損耗が含まれていないか
  • 修繕の範囲が適切か(部分補修で済むのに全面張替えになっていないか)
  • 見積金額が相場と比べて妥当か

不明な点があれば、「見積書を確認してから回答します」と伝え、後日検討する時間をもらいましょう。

入居時の写真を残しておく

入居時に部屋の状態を写真で記録しておくことは、退去費用のトラブル防止に非常に効果的です。入居前からあった傷や汚れを証明できれば、退去時に不当な請求を避けられます。

📸 撮影しておきたい場所:

  • 壁・天井(傷・汚れ・穴)
  • 床(傷・凹み・シミ)
  • 水回り(カビ・汚れ)
  • 設備(エアコン・給湯器など)
  • 窓・サッシ(傷・汚れ)

撮影日がわかるよう、日付入りの写真を撮るか、撮影日時のデータが残る形で保存しておきましょう。

退去費用が高すぎると感じたときの対処法

退去費用の請求額に納得できない場合は、以下の手順で対処しましょう。

見積書の内訳を確認する

まず、退去費用の見積書を書面で請求し、内訳を確認します。口頭での説明だけでなく、書面で詳細な内訳をもらうことが重要です。

📄 見積書で確認すべき項目:

  • 修繕が必要な箇所と理由
  • 各項目の単価と数量
  • 借主負担と貸主負担の区分
  • 経年劣化が考慮されているか

内訳が不明確な場合や、「一式」としか書かれていない場合は、詳細な内訳を求めましょう。

国土交通省ガイドラインと照らし合わせる

見積書の内容を、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と照らし合わせて確認します。ガイドラインに記載されている負担区分や耐用年数と比較することで、請求内容が適切かどうか判断できます。

🔍 ガイドラインで確認すべきポイント:

  • 通常損耗・経年劣化として貸主負担とされている項目が借主負担になっていないか
  • 耐用年数を考慮した減価償却が適用されているか
  • 修繕範囲が最小限になっているか(全面張替えではなく部分補修で済む場合)

ガイドラインは国土交通省のホームページから無料でダウンロードできます。

【参考】 ・原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)

交渉時の伝え方

請求内容に疑問がある場合は、感情的にならず、根拠を示しながら冷静に交渉することが大切です。

💬 交渉時のポイント:

  • ガイドラインを根拠に、具体的にどの項目が不当かを指摘する
  • 「○○はガイドラインでは貸主負担とされています」と伝える
  • 入居時の写真があれば、入居前からの傷であることを証明する
  • 書面(メールなど)でやり取りを残す

口頭での交渉で解決しない場合は、書面で改めて異議を申し立てましょう。

相談できる窓口一覧

交渉しても解決しない場合は、以下の窓口に相談することができます。

相談窓口連絡先特徴
消費者ホットライン188(いやや)最寄りの消費生活センターに繋がる
国民生活センター公式サイト消費者トラブル全般の相談
法テラス0570-078374法的トラブルの無料相談
弁護士会の法律相談各地域の弁護士会初回無料相談あり

🏛️ 少額訴訟という選択肢: 話し合いで解決できない場合、60万円以下の金銭請求には少額訴訟を利用できます。少額訴訟は簡易裁判所で1日で審理が終わり、弁護士なしでも手続きができます。

【参考】 ・全国の消費生活センター等(国民生活センター)法テラス公式サイト

よくある質問

10年住んだら退去費用は0円になる?

0円にはなりません。経年劣化で設備の修繕費用は大幅に軽減されますが、ハウスクリーニング代(2万〜4万円程度)は居住年数に関係なく発生することがほとんどです。契約書に「クリーニング代は借主負担」と記載されている場合が多いためです。

敷金は全額戻ってくる?

全額戻ってくるとは限りません。敷金から退去費用(ハウスクリーニング代など)が差し引かれ、残額が返金されます。10年住んでいれば経年劣化で差し引かれる金額は少なくなりますが、敷金1ヶ月分であれば数万円程度の返金が目安です。

退去費用が払えない場合はどうすればいい?

まずは管理会社や貸主に分割払いの相談をしましょう。多くの場合、分割払いに応じてもらえます。また、請求内容に疑問がある場合は、ガイドラインと照らし合わせて減額交渉を行うことも有効です。どうしても支払いが難しい場合は、法テラスなどに相談することをおすすめします。

見積書にサインする前に確認すべきことは?

内訳の詳細、経年劣化の考慮、修繕範囲の妥当性を確認してください。その場でサインを求められても、「持ち帰って確認します」と伝えて問題ありません。一度サインをすると、後から「納得できない」と言っても覆すことが難しくなるため、慎重に判断しましょう。

まとめ

賃貸に10年住んだ場合の退去費用は、3万〜5万円程度が相場です。国土交通省のガイドラインでは、通常の使用による損耗は経年劣化として貸主負担とされており、10年も住めばほとんどの設備で耐用年数を超えているため、借主の負担は大幅に軽減されます。

ただし、タバコのヤニ汚れやペットによる傷、故意・過失による損傷は経年劣化として認められないため、高額な費用を請求されることがあります。退去費用の請求に納得できない場合は、ガイドラインを根拠に交渉し、それでも解決しなければ消費生活センターなどに相談しましょう。

【参考情報】 ・原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)全国の消費生活センター等(国民生活センター)

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